早春の奥日光、残雪の足跡の主を追って

まだ主人と付き合っていた頃の話です。
奥日光に2人で旅行に行きました。日光には修学旅行も含めて何回か行ったことがありましたが、更にその奥まで足を延ばすのは初めてでした。

宿に着いて辺りを歩くと小さな湖があり、その周りが散策路になっていました。
春でしたがまだ雪が残っており、そこには野生動物の足跡がたくさん残っていました。夜に足跡の主を見つけに外に出ることにしました。
湖が月に照らされて水面がきらきらと輝き、吸い込まれそうな不思議な美しさで、昼間と違いこの世でないような感覚をおぼえました。

小一時間くらい歩き回り動物に出会うのはあきらめて宿に帰ろうと駐車場を歩いていたら、鹿の群れが目の前を突然横切りました。
駐車場の街灯に反射して光った目と一瞬だけ目が合いました。

もう10年くらい前のことなのですが、鮮明に覚えています。
確かに温泉に入ったり、他にもあちこち観光して回ったはずなのですが、あまりに鹿との出会いが印象的過ぎて他はあまり覚えていません。